竜涎香(りゅうぜんこう)について(山田海人さんの記事より)

※この記事は海洋学者・山田海人さんの記事転載になります。

浮かぶ金塊とは

海面にはいろいろなものが浮かんでいて、舳先の見張りは怠れない。外国からの人工ゴミは近年増えるばかりである。そんな中でとても高価な漂流物もある“竜涎香りゅぜんこう”と呼ばれるものだ。

竜涎香は現在1g20ドルで取引されているちょっと前の金と同等の高価なものである。 またの名を“浮かぶ金塊”と呼ばれているものだ。竜涎香は昔から香料や媚薬、万能薬などとして扱われ、クレオパトラや楊貴妃も使われた超高級なもので、現在でも香水やお香として珍重されている。

どうして竜涎香が海面を漂っているのだろうか?これはマッコウクジラが排泄した“クジラのフン”なのだ。特殊な油でできているので浮力があり何年も海面に浮いている。マッコウクジラから排泄されて海面で空気に触れて酸化が進む、紫外線を浴びて化学変化を起こすことから長く海面を漂っていたものほど高価で取引されている。短いものでも2~3年、長いものは十数年も漂っていたものもある。

歯クジラであるマッコウクジラは深く潜水することで知られている。大好物の深海巨大イカ“ダイオウイカ”を探して餌としているのだ。ダイオウイカは大きくなると体長18m重さ1トンにもなり、水深300mから3000mに棲んでいる。

マッコウクジラはダイオウイカをはじめ大好きなタコ・イカを常食にしているが、タコ・イカには口のところに歯の役目をしているカラストンビがある。硬いキチン質でできているカラストンビは消きずにマッコウクジラの胃や腸を通って未消化物として排泄される。しかし尖った先端はまれに胃や腸 に刺さることがある。 まれに刺さったカラストンビにはやがてクジラの体内から特殊な油が出てカラストンビを包んでいく 。徐々に厚くなってやがて胃や腸から抜けて、排泄物のフンとなり、これが竜涎香となる。こうしてできるので全てのマッコウクジラが排泄するわけではない。捕鯨をしていた頃はマッコウクジラの体内から時折竜涎香が採取されていた。1000頭に1頭にも満たない割合である。

17世紀の琉球王朝はこの竜涎香の有数な輸出国であった、国をあげて竜涎香を探していたのだ。ウイリアム・アダムス(三浦安針)も那覇で100キロ購入したと書かれた古文書もある。

 

現在マッコウクジラは世界で200万頭も生息している。また、竜涎香を拾って、大金を手にした外国のニュースもある。海面に浮かんでいる怪しい物体を見たら、ちょっと“浮かぶ金塊”竜涎香のことを意識して欲しい、貴方が大金を手にする機会なのかも知れない。

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ambergrisjapan
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マッコウクジラの排泄物が海を漂流し岸辺に打ち上げられた、貴重な竜涎香(りゅうぜんこう)の日本国内での流通を生み出す活動をしております。
環境や人の心と身体が健やかになって行くことを願い、龍涎香の広報や研究・鑑定、商品開発などを行っております。